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【書評】バフェットの財務諸表を読む力

バフェットの財務諸表を読む力」を読みました。

どのようにして永続的競争優位性を持つ優良株を見つけるか?またはそういった銘柄の特性について書かれた本です。

以下、本書の要点と書評になります。

バフェットの財務諸表を読む力の要点

販売および一般管理費は、一貫して低いほうが良い

粗利益に対する販管費の割合が30%以下なら優良企業とみなせる。

30〜80%でも、永続的競争優位性を持つ企業は数多く存在するが、たびたび100%近い販管費比率を出す企業は、激しい競争に巻き込まれている可能性が高い。

また、販管費比率が低くても、研究開発費、設備投資費、債務支払によって利益が削がれていく企業は、競争から脱落する可能性が高い。

純利益が右肩上がりである

純利益の割合が長期的に20%以上で推移してきた企業は、何らかの長期的競争優位性を持っている可能性が高い

逆に、一貫して10%以下で推移してきた企業は、過当競争の業界に所属している可能性が高い。

純利益率が10〜20%の間の企業の中には、まだ見つけられていない永続的競争優位性を持った企業が存在する可能性がある。(なぜなら、純利益率20%以上ですクリーニングした場合にフィルタリングされてしまうので。)

ただ、純利益率が高くても、金融業界の会社は避けたほうがいい。なぜなら、高いレバレッジを使っている可能性が高く、大きなリスクを取ることになるかもしれないので。

棚卸資産の急激な増減がある企業は要注意

永続的競争優位性を持つ企業は、製品販売数を伸ばして利益を増やしていくため、棚卸資産と純利益がともに増加していく傾向がある。

しかし、棚卸資産が急激に増減した企業は、過酷な競争体質を持つ業界の中で、いっときのバブルとバブル崩壊を経験した可能性が高い。

なので、棚卸資産が一時的に増加したからといって、それが長期的競争優位性を持っていることは意味しない。所属業界の将来性や、棚卸資産と純利益の推移を長いスパンで観察する必要がある。

流動比率で企業の優劣は見分けられない

流動比率の計算式は以下の通り。

  • 流動資産÷流動負債=流動比率

流動比率は、1より多い方が良いとされている。なぜなら、流動比率が1以上ということは、一年以内に返済しなければならない流動負債を、1年以内で現金化できる流動資産でまかなえることを意味しているので。

しかし、永続的競争優位性を持った企業の中には、流動比率が1以下の企業がある

なぜ流動比率が1以下の永続的競争優位性を持った企業が存在するのかと言うと、そういった企業は巨大だ収益力があるから。たとえ流動負債が流動資産よりも大きくても、直ぐに返済してしまえる。よって、あえて流動資産を厚くしていない。

また、巨大な収益力をもつ永続的競争優位性を持った企業は、簡単に資金を調達できるので、流動比率が少なくても問題ない。

要するに、現金を溜め込まなくても、ほぼ確実に定期的に巨大な収益が上がるので、流動比率が1以下でも問題ないということ。万が一のときのために現金を確保しておく必要がないほど儲かっているということ。

よって、流動比率1以下だからといって、その企業が永続的競争優位性がないとはいえない

生産設備費は少ないほうがいい

激しい競争に巻き込まれている企業、もしくは常に技術革新がある業界に属する企業は、生産設備を更新し続けないと競合と張り合えない。競争から脱落しないために、競争の参加費として生産設備費を捻出し続ける必要がある。

一方、永続的競争優位性のある企業は、競争する必要がないので、生産設備を十分使い切ったあとで更新すればい。生産設備費が安く抑えられるので利益率が上がる

十分に利益が上がった後、そこから生産設備費を捻出すればいいので、生産設備増強のために外部から調達する必要はない。

高すぎる総資産利益率(ROA)は、競争優位性の脆弱さを示している可能性がある

総資産が低くてROAが高い場合、それは大した投資をせずとも大きな利益が出せるビジネスをしているとも読み取れる(≒競合会社を作りやすい)。

たとえば、コカコーラは430億ドル(本書記載時点)の資産に対してROAは12%である。プロクター・アンド・ギャンブルは1430億ドルの資産に対してROAは7%である。

これらの企業に対抗する企業を作るには、少なくとも同等の資産を用意する必要があるともいえる。その場合、莫大な資産を用意してまでコカコーラやプロクター・アンド・ギャンブルに対抗しようと考える者はほぼいない。

なぜなら、競合会社を作っても勝てるかどうかわからないし、そもそも競合会社を作るために莫大な資産が必要になるので。

一方で、ムーディーズの資産は17億ドルでROAは43%である。

ムーディーズの競合会社を作る場合、コカコーラやプロクター・アンド・ギャンブルよりも断然少ない資産で作れるし、ROAが高いので投資資金も回収しやすい。要するに、新規参入企業が出てきやすいと考えられる。

永続的競合優位性を持つ企業は、長期借入金が少額もしくはゼロである

優良企業は膨大な利益を上げているので、巨額な借り入れをする必要がない

過去10年の貸借対照表をチェックし、長期借入金がほとんどなければ、その企業は何らかの競合優位性を持っている可能性がある。

たとえば、コカコーラやムーディーズは、すべての借入金を1年分の純利益で完済できる。

一方、GMやフォードは10年分の純利益をすべて支払いに当てても、長期借入金を返済できない。

つまり、長期借入金を短期(3〜4年)で完済できるだけの純利益を上げている企業は、長期的競争優位性を持つ企業である可能性がある。

(ただ、LBOされた場合は別。買収金額が長期借入金として計上されてしまうので。)

内部留保が着実に増加している

企業の純利益は…

  • 配当
  • 自社株買い
  • 内部留保

以上3つに使われる。

貸借対照表に記載されている内部留保は毎年積み重ねられていく。赤字を出した場合は内部留保が取り崩される。

つまり、内部留保が着実に増加している企業は、純利益を着実に出している企業と言える。

内部留保は純資産の項目にあり、内部留保の増加は純資産の増加につながる。つまり、内部留保が着実に増加(純資産が増加)している企業は、株主価値(純資産≒株主価値)を増加させている企業と言える。

内部留保の増加率は、永続的競争優位性を見極める際の最も重要な指標の一つである。

株主資本利益率(ROE)が高い

株主資本利益率(ROE)は以下の式で算出される。

  • 純利益÷純資産=株主資本利益率(ROE)

長期的競争優位性を持っている企業は、ROEが平均より高い。たとえば、コカコーラは30%、ハーシーズは33%、ペプシは34%である。

一方で、ユナイテッド航空は15%、アメリカン航空は4%である。

ROEで長期的競争優位性を持つ企業を見分ける際の注意点は以下の2つ。

  • 高いレバレッジ(純資産に対して負債が大きい)を使っている企業のROEは高くなってしまう
  • あまりにも高い収益力のある企業は、内部留保を行わず、利益をすべて事業投資に回す(純利益が赤字になるのでROEを算出できない)

巨大なレバレッジを使っている会社は避ける

莫大な借金(レバレッジ)を使って利益を上げている企業は、収益性が高くなるので何らかの永続的競争優位性を持っているように見えてしまう。

しかし、リーマンショックでレバレッジを使っていた企業が倒産に追いやられた。過大なリスクが表面化する際に、レバレッジを使っている企業は淘汰される

よって、長期的競争優位性を持った企業を見つける際に、巨大なレバレッジを使っている企業は避ける

永続的競争優位性を持つ企業は、資本的支出(いわゆる設備投資)が低くなる傾向にある

多くの企業は、事業継続のためだけに巨額な資本的支出が必要になる。

たとえば、通信会社はその代表例である。通信網を整備するために巨額な支出が必要になる。また、技術発展によって古い設備を更新する際にも巨額な支出が必要になる。

永続的競争優位性を持つ企業は、そうでない企業と比較すると、事業継続のための資本的支出が少なくてすむ

コカコーラは過去10年間、一株当たり利益の20%しか資本的支出に使っていない。ムーディーズは6%しか使っていない。

一方で、GMは444%、グッドイヤーは950%も資本的支出に使っている。これらの巨額な資本的支出は借金と社債発行によりまかなっている。当然、その分の支払利息は増えていく。

長年に渡って年間の資本的支出が純利益の50%以下である企業は、長期的競争優位性を持っている可能性が高い。25%以下ならなおさら良い。

ウォーレン・バフェットはどのように株式売却タイミングを決めているか?

バフェットの保有株売却のタイミングは以下の通り。

  • もっと優良な企業を、もっと有利な価格で買うチャンスが訪れたとき
  • 保有株の永続的競争優位性が失われそうな場合
  • 株式バブルが発生した場合

感想

本書「バフェットの財務諸表を読む力」の初版が出版されたのは2009年であり、原書の英語版が出版されたのはおそらくもっと前になります。

バフェットの投資法は年々進化しているので、10年以上前に書かれた本の中で主張されていることと、現在のバフェットが重要視していることとの間には少しずれがあるかもしれません。

とはいえ、本書で紹介されている長期的競争優位性を持つ企業を見分けるための原理原則の殆どは、いまでも十分通用するものばかりだと思います。

投資する銘柄を選ぶ際のチェックリストとして使えば、損失を減らしてリターンを上げるのに役立ってくれるはず。

本記事で紹介していない重要項目については、ぜひ本書を読んで確認してください。(長期的競争優位性を持つ企業を選別する際の方法が、全部で58個紹介されています)

参考文献

-投資, 投資本の書評

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